すべてを理解してほしいわけではないし、してくれとも頼んでいない。
ただ降りしきる言葉を眺めながら、小説を執筆し、毎度思う話。
わたしは昔から文字を追いかけるのも、文字を綴るのが好き。
本を読むのも、言葉選びで遊ぶのも、文字を書くのも好き。
でも物語を考えるとか、順序立てることは、好きではない。
わたしにとって書くことは、目の前で、今まさにありありと繰り広げられるものをただ、吐き出す作業なのだ。
天井から降って来る文字をただひたすら書き出しているだけで、そこに観客が満足するような物語はない。
ハッピー・エンドでもないし、教訓もない。
きっと共感もない。
だからわたしは、わたしのすべてを理解してほしいとは思っていないし、頼んでもない。
むしろ降って来る文字を理解することなんて、無理があるように思う。
わたしでさえ、その文字がいったいなんなのか、わかっていないのだから。
だからわたしのことを、どこか遠くの地の人という風に特別に扱うのはやめてほしい。
むしろどこか遠くの地にいる「見知らぬ人」なのだ、これを書いているのは。
わたしは降って来たものを「書かされている」だけで、わたしが書いているんじゃない。
その見知らぬ人は笑って、手を振って、いつでも「サヨナラ」を言う準備をしている。
ほんとうにどこか知らない地へ行って、また知らないだれかの頭の上に棲んで、文字を降らせるのかもしれない。
だからわたしは、そんな「見知らぬ人」にほんの少し逆らって、
わたしが書いた文字のなかに、暗号を入れてみることにした。
もしかしたらだれも暗号に気づかないかもしれないし、
もしかしたら知識人や、なんでも意味を調べる癖の人には、解読できるかもしれない。
かと言って、文章を難しくしてしまうのはよくないから、
キラキラとした光る文字の鍵を、そこいらじゅうに散りばめておいて、
宝物を開けた者は、心の抽斗に浸透するような、満ち足りた気持ちになれるだろう。
宝箱を開けなかった者でも、最低限の驚きと発見があるだろう。
ストレンジャーは笑う。わたしの上で。
待ち構えたサヨナラ、それは一生来ない。
だってわたしは、いつだって愚直に、その通りには書かない。
お楽しみに。
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